メニイシェイプス
水辺で犬が吠える
砂漠の熱を受けて
鍋の中の狭い海にも
わずかに波が寄せては返す
おお メニイシェイプス
散らばる石のそれぞれ
汽笛が鳴り響けば
月から闇が落ちて
針の先の狭い窓にも
わずかに明かり
灯っては消える
おお メニイシェイプス
散らばる石のそれぞれ
おお メニイシェイプス
広がる傷のそれぞれ
シート
街の灯りが消えるころに
僕は君と待ち合わせる
話す内容がもうないよ
話す内容もないよ もう
もっともらしい会話なら散々した
バックミラー越しに僕は訊く
過去が襲ってくるなんて
よくあることでしょう
街に灯りが戻るころに
僕と君は子どもになる
まねる必要はもうないよ
まねる内容もないよ もう
頭の中の迷惑なら散々した
去り際 横見に君は言う
何かわかったことなんて
一度もないでしょう
流れる
揺らめく木々の隙間に
重なる影の群れ
今ならわからないまま
遠くへ流れていける
手を放しているのは
決めることもないから
目を薄く開けるのは
知らない道を歩きたいから
投げ捨てて
浅く沈む
身を任せ
すきまに
もろく滑りこむのだ
漕ぎ出した船の流れは
今でもぼやけている
揺らめく木々を仰げば
まだ名をもたない虫
低い午後
柔らかく 温和で
午後は低い
誰も窓の外を見ようとはしない
長い間こもった
居心地のいい空気を
洗練させているから
盲目な彼らの
午後は低い
誰も窓の外を見ようとはしない
長い間眠った
とりとめのない声が
小さく
揺れているから
いびきのような足音がする
気がつけば
今にもほどけそうな
君のその靴!
別れ
本当の別れを告げると
人は知らない顔をする
本当の言葉を喋ると
見たことのない顔をする
歩道の隅ではタップダンス
蒸せる暑さを蹴り上げる
隣町の星座
浮かんでは消える
愛だけが同じさ
それ以外全て
愛だけが同じさ
遠く離れて
釘が抜けたなら
饒舌が光る夜
酒の肴は有り余るほどで
時間だけがない
それぞれに灯る窓の明かりは
採れそうで
いつも触れられない
泣きそうな顔のまま
どこかに決めつけられている
釘が抜けたなら
あなた
きっと緩まって蜜蜂のように
軽く飛ぶだろう
かさばったままの
日々を曲がれば
錆びついた夜が
色を変える
それぞれに灯る窓の明かりは
さみだれて
いつも触れられない
泣きそうな顔のまま
未だに締め付けられている
釘が抜けたなら
あなた
きっと緩まって
蜜蜂のように
軽く飛ぶだろう
釘が抜けたなら
あなたの青い重心は
街角を抜けて
軽く飛ぶだろう
水
生温い風が
吹き付けるから
目が乾いてしまう
僕は劇場
向こうにいる人々
微笑んではくれない
僕は劇場
横にいるあなた
微笑んではくれない
体の水が
じりじりじりと
流れ出て渡る
今はまだ
泳がないで
今はまだ
そこにいて
僕は劇場
横にいるあなた
微笑んではくれない
体の水が
じりじりじりと
流れ出て渡る
ラフ
猥雑なことからはじめる僕ら
完成が切り裂き 夜に響く
簡単なことから忘れる僕ら
運命がなる時 人は叫ぶ
いいものね
そういうのも
無駄が
それだけで
豊かになるよう
夏を枯らして
誰かが呼んだ
どこまでも広がる大きな声が
今では悲しい
夏を枯らして
刺さるほどに懐かしい景色
恥ずかしいほどに愛おしい
夏を枯らして
誰かが呼んだ
どこまでも広がる
刺さるほどに
愛おしい
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