2017年1月5日木曜日

柴田聡子 - 白蛇荘より / Songs from White cobra apartment



顔が好き / I like your face

せっかくの二人旅で
細い道しか無いなんて
振り返る幅も無い道
顔を見ていたいから
だれにもじゃまされないように
遠くまで来たけれど道がずっと細い

顔がすき
声やからだは思い出せず
顔がすき
はなげはなくそなみだよだれ

冷蔵庫や洗濯機や掃除機やテレビの音が
無いとさみしいと信じこんでいる

顔がすき
一秒足りとも飽きがこない
顔がすき
それ以外なにも知らないけど
顔がすき
どんな訳かど訊かれても
顔がすき
ほらハウステンボスが見えるよ
ステンドグラス
ステンドグラス



耳をください / Your ears,please

まず顔が好きでしょ 前髪が好きでしょ
積み木をすぐ崩して遊ぶのすてきでしょ
腹違いの息子 まんじ型の傷のあと
そろそろ気が付いてくれなきゃ泣いちゃうぞ

たとえば今日がイスだとしたら壊れそう
くさって脚が折れて
気軽に座れなくなっちゃうぞ

さみしがりやだけど群を抜いてがんこ
足が速いことを自慢せずに謙虚
たらいまわしされても文句も言わないで
坂道登ったら夕焼けにひとこと

朝いちばん辞書にある知らないことばを
丘で叫ぶと
どこかのだれか知らない人が
ほれぼれするでしょ

うぬぼれている人の部屋に必ずある写真が
うちにもあるので安心して眠れるね

大きい音ならなんでもよくって
歌える歌なら好き嫌いもない
はなしを聞くならいくらでも
ぼくの耳はだれかのもの

悲しそうな声でうれしそうな声で
どんな人からどんな時電話が来るの
道を歩きながら自転車乗りながら
どれくらいの音でイヤホン聴いてるの

朝いちばん辞書にある知らないことばを
丘で叫ぶと
どこかのだれか知らない人が
ほれぼれするでしょ



フィンランド記念公園 / Finland memorial park

ひどいけんか
ひどいたいど
言ったことない言葉がそくそくしてきて
気持ちがいいね
かおのかくど
めつき
そうしていればふたりは
親密そうにみえるしぐさ

そしてのっかりあう
重い思いをする
花束ひとつがからだより重い
もっとのっかりあって
重い思いをしたい
頼み忘れていたサンタがなかなか来なくって
サンタがなかなか来なくって
サンタがなかなか来なくって

春と夏と
秋と冬と
昼と夜と夜更けと夜明けさえ
見分けがつかなくなって
気がちがっちゃった
どんどん忘れちゃう
ぎりぎりで思い出せるのは
前からずっとやりたいあそび

それでキャッチボールしちゃう
今日が雪でも知らない
夜が足踏みしてる
マーチングバンド組んで
どさくさに紛れて夢を叶えてしまう
キャッチボールしたい!
それがしたいんじゃなくって

フィンランドみたいに夜が来ない
ふしぎ・ふしぎ・ふしぎの世界
フィンランドみたいに夜が来ない
ふしぎ・ふしぎ・ふしぎの世界



夢の中の夢 / A dream in a dream

大きい大きいどこかに出た
ころげてまわって来た
全部を見て全部を聴いて
帰ってきたよ

あの景色を話したいのに
聞かせたいのに言葉が無い
たのしいようなつまらないような
ひろい川はば
夢の中の夢の中の夢の中の夢

夢の中をずっと歩いて
目が覚めたら呼んで
のぞきこんでくれる目の中で
目が覚めたなら

それは夢のようなことで
それはたたみの上に叶い
お先に起きて思い出すのは
かなしい夢の
夢の中の夢の中の夢の中の夢

はなしあうよりもっといいこと
見つめあうよりもっといいこと
また生きて会えたらやろうね
また生きてる時にね



天国がいっぱい / So much heaven

ひもの上で
ひもの上で
しらじら暮らして
右目と左目
どんどんはなれて

好きなあの子が
やってくるよ
右目と左目
はなれて笑って
抱きとめて
イチミリで笑って
胸の奥でこころがばくはつ

ものをひろって
ものをひろって
じわじわ太っていって
目黒にあこがれ
あるよでないようで

ここがどこより
天国だねって
ひざをたたいて
あいづち打って
打ってるあいだに
風に飛ばされて
屋根が無くなって
星がない夜空

運が悪いなんて絶対に
無いから不安な顔しまって
きれいなところじゃないけれど
晴れの日だけ電話かけておいでよ
針に糸tおおしてげらげらやろうぜ
マイクをまきつけてはあはあしようぜ
ミュージック無くなって
カッコーが聴こえる

みどりのくるまで
あそこ行きたいな!
思った以上に
むずかしいわがまま
なにがなくても
これがあるから
どこに住んだって
どこでもいっしょでしょ